プロローグ
光と風がそよぐ。木陰でうたた寝をする、二人の少女のまだあどけない頬に、緑の影がきらきらと揺れていた。
赤毛のショートカットの少女の名はヒナタ。鼻の頭に薄くそばかすが浮いている。
黒髪をおさげにした少女の名はユズリ。えんじ色のカバーをした本を胸にかかえている。
青い絵の具を溶いて流したような空に、飛行機雲が、一筋伸びていく。
少女たちの傍で夢をみていた黒猫が、静かに目覚めると、しなやかな体を伸ばして、あくびをした。
小さな蝶が、その耳元を、遊ぶように笑うように、通り過ぎる。
「ん・・・・・・」
ヒナタが寝返りを打って、うっすらと瞳をひらいた。
ユズリがくしゃみをする。
むっくりと起き上がったヒナタは、急にひらけた眩しさに、額に手をかざした。仰向けに寝転んだユズリが、本を抱えて、くすくすと笑い出す。
「ヒナタ、すっごい寝癖」
「あ、ユズリ。肩にとかげが」
「ええっ」
「いないわよ」
「もう、ヒナタ!」
少女たちの笑い声が、明るく明るく、光と風に融けていく。